バイクとレザーIV
さあバイクウェアの分野へと参入を果たしたカドヤですが、
もともと皮革製品のオーダーメイドが専門であったため、
ツナギの製作も難なくこなし、順調に実績と知名度を高めていきます。
このままほっといても一流の皮服ブランドとして認知され、
普通の有名どころとしてやっていけたのでしょうが、実際はそうはなりませんでした。
やはり潜在的な要因なのでしょうか。
ヘスパイトスの血が騒いだのか、はたまたラインの黄金の呪いなのか。
いやそんな太古のモノを引っ張りだす必要はありますまい。
若き日に多くの男子と選ばれし女子が不可避的にかかってしまうというあの病気。
アレで説明つくでしょう。
そう、どうやらドワーフ職人集団・カドヤ皮服店は、
厨二病というヤツを発症させてしまったようなのです。
性能を追求し、優れたモノを世に生み出す。
これは多くの職人が希求し尽力し実現していく夢であり目標でもありますが、
世の中にはそれだけでは飽き足らない人々もまた、いるものです。
そして優秀な連中ほどそのきらいがひどい。
シラクサのアルキメデスしかり、ダ・ヴィンチしかり。
岡崎五郎入道正宗しかり、中松しかり。
普通に作るだけでは我慢ができず、ついついトンでもないものを作ってしまうのです。
そして我らがカドヤしかり。
カドヤの場合、そうした特異な情熱の矛先が、厨二病的なモノへと向かいます。
もともと硬派な仕事をしていたこともあったかもしれませんが、
ここらはやはり天性のモノな気がしますね。
MIL製品を作っていたアルファインダストリーやアヴィレックスは割りと普通のアパレルと化していますし、警察向けのコートを作っていたスピワックも普通のブランドになっていますから。
カドヤが目覚めたのは、普通に性能が良いモノ作りにプラスして、男臭い、カッコイイ、強そうなモノを作る、という方向性でした。
要は機能美に加えデザインの独創性を追及しはじめたのです。
そのデザインがまた、万人がその素晴らしさを賞賛するようなモノではなく、
最強とか最凶とか暗黒とかロックとか、何かそういう形容にビビっときてしまう厨二な人々の魂に激しく訴えかけるようなモノだったのでした。
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